WITHOUT CREDITS #1 HAIR STYLIST

ウルフスタイルの髪型にレザージャケットを羽織る。詩人のように繊細な言葉遣いをする彼の言葉は、
僕たちの想像と大きく違って感じた。
20 代中盤の自分の感性は鋭かった。 だが、その感性が行き過ぎ、仕事で大きな失敗をした。
ヘアスタイリストはどんな職業なのか。何を考え仕事と向き合うのか。一見ヘアスタイリストではなくバ ンドマンのような風貌をしている⻘木さんに自身の職業について赤裸々に語ってもらった。

 

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ヘアメイクをやるにあたって勉強したこと

⻘木: ヘアメイクをやるにあたって、もちろん髪型の勉強はしている事は大前提で言うと、
光、照明のこと、カメラの勉強をすごくした。 カメラアシスタントもした、カメラマンがどの感じで撮るかが分かると、どういう状況でもこう映るというのが分かる。この光でこの画角で撮るのならば、これぐらいカバーしない方 がかっこいいとか。そのために勉強をすごくした。
両者の側を知ることがとても大事。

世界作り

⻘木: ヘアメイクは現場でマウントの取り合いの部分がある。
例えば、マネージャー含めディレクター、相手に主導権がある状態になると、自分のやりたいヘアメイクは出来なくなってしまう当たり障りのないヘアメイクをオーダーするのなら、僕じゃないいつも頼んでる人にやってもらってくださいって思うし笑
自分は、被写体の子がより輝けるやりたい髪型が明確にある分、
いかにそれを実現しやすい環境にするかが非常に重要。
だから現場では常にリアルなキャッチボールをするように普段心がけている。
その時に僕は、音楽の力を借りる。自分で居ることのできる空間を作るための自己演出を始める。 現場が、朝早かったらみんなが知ってて雰囲気のいい音楽、エドシーランとかを流したりするのが空間づくりのセオリーだと思うんだけれど、
自分は「今日の人違う」と思わせたいから、MOROHA を流したりする笑 結局、その日その時に、被写体の子にどの音楽のリズムのメイクをするかで、顔は変わっていくし、ストイックなヘアメイクをしたのに気持ちが K―POP だったりすると、 顔と心が一致しなかったりする。それを被写体の子に渡した時に、その子は受け取るのか、 携帯を開いて遮断をするのかは見ているポイントかもしれない。

現場で求められる「普通」

⻘木:ディレクターに「普通の OL」を作ってくださいと言われたとする。 自分たちの意見だと普通の子もしっかりメイクしてるし髪も巻いている。 だけれど人に見せる「普通」は少しマイナスに設定されている気がして、
未だに「普通」は 難しい

ファッションショーでのモデルと俳優の人

⻘木: んー役者とモデルでメイクは全然違う。 やっぱりモデルの人と比べると役者の人は歩き方が独特で、生身で歩いている感じが役者 の面白さだから、リハーサルを見てその人の個性を知ってからメイクをする 逆にモデルさんはとてもプレーンな状態で来るから、こちら側からメイクで方向性や世界 観を与えて、それを受け取ってもらって歩いてもらう。だからリハーサル前にはメイクをし ていたいかな。そこが役者とモデルの人のメイクの違いかな。

仕事での悩み

⻘木:自分の考えは少し普通とは違うかもしれないなと思っていて、そこにいくまでに確固たる意志は持っているんだけど。
現場で求められる、いわゆる王道ど真ん中直球ストレートが普段シュートやフォークとか を投げている分投げれなくなる時がある笑 あとは今でも、俳優、カメラマン、照明というカースト制度はどうしてもあって、 メイクの立場がたまに理不尽だなと思う時もある。

自身で開く個展

⻘木: ヘアメイクという仕事とは別で 2 年から 3 年に一回、自分で企画・構成をして個展を 開く

Q:なぜやろうと思ったんですか?

⻘木: 誰と自分がやりたいか、何を世に残したいかを真剣に考えたいし、日々感じるフラスト レーションを表現したいというためでもある。フラストレーションはいいものを作る中でとて も必要なものだと思うから。 その中でパートーナー選びが難しい。この人と一緒にやってみたいという強い気持ちはあるけ れど、個展というものを作る上で、パートナーを会ったことのない唯一無二の 1 の人から選ぶ のか、連絡のしやすい携帯の中にある 1 の人を選ぶのか、そこは難しいなあ

Q:自身で企画を作る時は何を意識するのか

⻘木:自分が文字を書いてざっくり脚本のような、自分が見てみたい男と女を書いて、それをカ メラマンに読んでもらいロケーションと出演者は自分で決め、撮ってもらう。 その時浮かぶアイディアは文章で留めておきたい。 アイディアを映像や自分がやりたい髪型として考えると画は完成してしまうから。 例えば「可愛い」という文を持っていって現場で「可愛い」の具現化をする

Q: 文章から考えても創造の具現化が湧いてこないですか?

⻘木: んーイメージを増やすってことかなあ。ワードは「可愛い」だけれどそこに夕方 17 時 ぐらいとか仕事終わりとか。言葉で設定や、時代背景を増やして、それを役者に伝え、委ねる。 そうすると映像や画で捉えている範囲を超えて新しいモノが生まれる気がする

Q: 映像ではやろうとは思わないんですか?

⻘木: 映像は、コントロールが多すぎる気がする。静止画は余白は見た人に渡すことができる から。だから自分は、静止画で止まっている。まだ映像に手を付けるのは、怖いのかもしれない。 ただ少し悩みがあって、自分が書く、文章はあるけど、ここにリズム、もしくはメロディがつい ていたらもっと楽になるのになあって。

Q: どういうことですか?

⻘木: 音楽はリズムやメロディを通して相手に真意を伝えることができる。同じ言葉が続 いてもメロディがあれば、読んでいていいものに変換される気がする。だけど、文章だけで は単調になってしまう気がする。

そこに難しさを感じるし、相手に文章を渡した時に不安になる。 あと、女の子の言葉を書くのが難しいなあ。自分は男だから、女性はあくまで恋の対象の存 在であって、女性を綺麗なものやファンタジックとして捉えてしまう。黑い部分やを裏側あ まり描けない。どういう会話をしているのかとか。そこが難しい。

まるで詩人と話してるみたいです笑
でも、自分たちがヘアスタイリストと捉えている実態と違うのがリアルだし、
そこが際立てば際立 つほどヘアスタイリストという職業が面白いなあと思います。

ヘアメイクをやっていて衝撃を受けたこと

⻘木: 安藤モモ子さん監督、満島ひかりさん主演の「カケラ」という映画だね。

カケラ あらすじ
恋人との関係に疑問を抱き始めた女子大生ハル(満島ひかり)はカフェでカプチーノを飲んでいると、
リコというレスビアンのメディカル・アーティスト(中村映里子)に声をかけられる。
クリーニング屋を営むリコの家に行くなど交流をもつ間に、二人の間には愛が芽生える。
男との関係を清算できないハルを居酒屋で批判するリコ。
二人はしばらく絶交状態に。そんな中、リコは自分の顧客である山城陶子(かたせ梨乃)をゲイバーで発見する。
リコと陶子はしばらく付き合うが、ハルから電話があり、リコとハルが復縁。
しかし、世間体を気にせず愛情表現をするリコへの戸惑いをハルは隠せない。そして・・・。

脚注: Wikipedia

自分がヘアメイクをやっていく上で本当に衝撃を受けて、 内容は、男と女がいて、別れる。彼の家に女はいて、2 ヶ月ぐらいかけて荷物を彼の家から 運び出すんだけど、ある時、彼がいる時に荷物を取りに来てしまったのね。まあ別に付き合 ってないし、飯ぐらい食おうって感じになって。食い終わった後に少しずつ男が女にちょっ かいを出すんだよね。付き合ってないけれど元々付き合ってたんだし、SEX しようぜって。 女は嫌がるけど男はチカラ強いから女を脱がす。

そうしたら別れてから 2 ヶ月ぐらい経ってるからその女には脇毛が生えてて笑 その時にやられたーって思った。 自分が作品を作る中で、その女の子に脇毛を生やさせるっていう度胸はないし、そのリアリ ティは必要あるようで必要ないことでもあるから、そこのリアルさを自分は持ってないな ーって。今までの自分のヘアメイクは作り込み過ぎてたのかなあって。ヘアメイクは綺麗にする仕事だけれど、やりすぎる事によって作品のリアリティを無くしてしまう可能性があ るかもしれないということに気付かせてくれた。

街の広告や CM など綺麗なものが求められるモノについてはどう思う

⻘木: 恥ずかしいけど 5 年前の自分はしっかり綺麗に作ってたね。 だけれど、どこか尖っていて、このリュックの中にある道具で俺の作品は完成すると思って いて、このリュック以上の道具は持たずに現場に行っていた。、自分はこのリュック以上の 道具が必要な作品は作りたくないし、俺が作りたい作品しか作りたくないっていう意思の 現れだったのかもしれない。ここにないモノで作りたいなら俺には求めないでくれって。先 方に選ばせることをしていた。
でも今はどんどん荷物が増えて行っているんだけどね笑

Q: 道具は初めは少なくて、増えて、また少なくなるという流れは聞いたことがあるので すが、そこが増えていっているというのは面白いですね。道具が増えて行ったのはなぜです か?

⻘木: もっとミニマムなこだわりが増えていったからかなあ。この作品にさらにこれを足 したらよりいいものになると思うと、道具が増えていった。道具が増えていくのがなんかち ょっと嫌なだけで、ただ、やろうとしていることは昔から変わってはいないかも。 自分が最低限作り手ではないところにいたいというか。
相手側に 70%ぐらいは作って欲しい。30%は自分で作っていたいけれど。 相手がどう思うか、という余白の部分を大切にしたい。

Q: 5 年前でしたら 70%と 30%の割合が逆だったのかもしれないですね。

⻘木: あーそうだねえ。5 年前は逆だったかも

Q: 変わったきっかけはなんだったんですか?

⻘木: やっぱり全部自分でやっていないからかな。自分はヘアメイクなんでっていうとこ ろが大きいのかも。
写真でいうとカメラマンが撮ってくれないと作品にならない。
表現で言うところの 40〜50%はカメラマンが握っていて、被写体である役者が他を握って いて、ヘアメイクは美術に近い部分があるというところに気づいたからかな。 五年前の自分の作品は、見て俺の作品カッコよくない?こんなことできるんだぜ?っていう気持ちだった.

好きな音楽

⻘木: ジャンルでいうと、ロックとフォークが好き THE BLUE HERTS や MOROHA

今やりたいこと

⻘木: 映画がすごくやりたい。だけどすごく向いてないのがわかっている。

Q: 向いてそうだと思いますけれどどうですか?

⻘木: 一回だけ映画のヘアメイクをしたことがあるんだけどその時にすっごい失敗をし たからなんだよね。
1 時間オーバーぐらいの作品で、1 週間で撮った。順撮りでもないから、撮影の時系列もバ ラバラで、脚本をすごい読み込んで、よしこれ俺やれると思って。それで、撮影が始まって 俺は初めての映画っていう怖さもあってか、技術を出した。 時系列じゃ撮れないからこそ、自分の技術でその時系列をカバーしようとした。 昼撮りたかったシーンだけど、昼に撮れない。 じゃあ俺の技術でその女の子を昼の状態にメイクしてあげるぞって肩をブンブン振り回す 勢いで現場に臨んでた。 だけど、完成した作品を見て、こんなに融合しないんだって落ち込んだ、ありえないぐらい 落ち込んだ。

その映画は OL の話。シーンでいうと OL の彼女が仕事を終えて家に帰る。携帯に別れよ うって彼氏からメールが届く。彼女は家を飛び出して彼氏の家のドアをノックする。 そのノックをするというシーンの撮影で、
自分なりに想像したわけ。じゃあ彼女は 10 時から 17 時まで仕事していた、家で仕事終わ ってふーってなって髪ほどくかな?そこで彼氏のメールが来て焦るよね?慌てて彼氏の家 へ行くよね?って。 そこでの彼女の乱れ感をヘアメイクとして頑張ったんだけれど、全く融合しなかった。

Q: 話を聞いている感じは融合しそうな気がしますけど、違ったんですか?

⻘木: そこが難しいしヘアメイクの面白いとこだなって思うんだけど。 これが映画ではなくて写真だったら成功していた。
映像だとそこに役者の息づかい、彼女の震えとかが入り、彼女が男に振られるというシーン が少し猟奇的な所まで引き上げられてしまった。結果として味付けが濃過ぎた。 メジャーリーガーが草野球に来てソフトボールのゴムを潰すみたいな感じかな。 でもその時、演じる側にパスを出す仕事が自分の仕事だなって再確認した。シュートを打っ てはいけない。そこが映画の難しい所。

バカと天才について

⻘木: んー難しいなあ。天才については考えたことはあるけれど、バカについて考えたこ とはあまりないかも。シンプルに思うとすれば技術がある人は天才、技術がない人はバカ。 プロである以上絶対必要な部分は、技術だと思う。 上手い下手、趣味嗜好というのはあるけれど、技術がないと全ては始まらない気はする

ヘアメイクの行く末

⻘木: 結局のところ
ミュージシャンとか俳優と同じ立場になりたいんだと思う 映像や写真、ライブ、その空間を作るための一緒に戦う戦友みたいなものに。 やらせていただいてありがとうございますみたいなものはどこか気持ちが悪くて、 あなたが私を選んだんでしょう、私もあなたと一緒にモノを創りたいと言う気持ちでこれ から先も戦っていきたいし、モノを創っていきたい

 

同じモノを見ていても着眼点が違うというのは、専門職を志す人ならではの感覚かもしれない


INFOMATION

”PICK-UP ARTICLES” Episode 01

青木/(  https://www.hairaoki.com/ )

1982年生まれサロンワークを経て、
2006年よりYAS(hair/M0)に師事
2011年 独立
ファッション、音楽、映画等、様々な分野
で活動の幅を広げている

Born in 1982

work for 5 years at a beauty salon (Tokyo).

I studied under a teacher in YAS (hair/M0) in 2006.

I am starting  as a freelance Hair stylist from 2011.